『MIND GAME』
8/15、粛々と我が国の歴史を振り返るなどという殊勝なマネをするわけもなく、ノンキに『MIND GAME』を観に行ってきた。
ボクは、基本的に登場人物が語りすぎる映像作品が嫌いだ。「説教くさい」「ラジオドラマじゃあるまいし、伝えたいことは映像で見せてくれ」などと思ってしまう。何なら「心の機微のわからないバカが増えたから、懇切丁寧に説明してやらなきゃいかんのかなぁ」と制作者に同情したりもする。
実は、この『MIND GAME』、語りすぎる作品だったりする。主人公の西くんは、声高に宣言する。「自分を信じきる」「何よりも力強く、まっすぐと、のびのびと、すべての力でやってみる」「いいヤツもたくさんいれば、悪いヤツもたくさんいる。そんな世の中が大好きだし、そこで生きていきたい」(うろ覚えだが、内容はこんな感じ)。しかし、本作が、どれだけツラくても可能性を信じ、現実社会とコミットし続けようとするお話であることは映像でも語られている。西くんは、初恋の人・みょんちゃんの店に押し掛けてきたヤクザに殺されたにもかかわらず、強引に撃たれる直前の場面に復活。逆にヤクザを撃ち殺し、みょんちゃんと、みょんちゃんのお姉さんを連れて、ヤクザの仲間とカーチェイスを展開する。そして、桃源郷とも言うべき場所にたどり着き、平和で楽しい生活を送るが、先がないと見るや、人殺しの汚名を着せられることも省みず、現実へ復帰しようとする。これで十分伝わるだろう。言葉を弄する必要はなかったのかもしれない。
しかし、西くんの宣言は鼻につかない。マンガ家志望ながらも、今はバイトで食いつないでいる西くんは、殺される以前はイマイチ自分に自信が持てないでいた。みょんちゃんと久々に再会し、イイ感じになっても口説けない。みょんちゃんの婚約者・りょうの好青年ぶりを見ては、あっさりと完敗を認めてしまう。みょんちゃんがヤクザに襲われそうになっても、体を丸くして震えているだけ。せめて「シバくぞ」と言おうとするものの、言葉の途中で肛門を撃ち抜かれてしまう。ボクは、これを、西くんのような何の取り柄もない文系男子の特徴のひとつだと思っている。何かをするだけの力と度胸はないけれど、妙に知恵だけは回るから、現実の壁や彼我の力量の差だけは知っている。だから「こうしたい、ああしたい」という願いはあっても、尻込みしてしまう。後先省みず、ヤクザを止めようとしたりょうのようには振る舞えない。そして、いつも後手後手に回って後悔をする。
そんな西くんが、どうやって現実の壁を突破したのか? 「有言実行」だ。有言実行というと「宣言したことを実現する」という前向きな意味あいでスポーツ選手などが口にしがち(まぁ、本当はこんな四字熟語はなく「不言実行」のもじりにすぎないのだが……)だが、本当は貧弱な文系男子にこそ似合う言葉だと思う。他人に高らかに宣言すると、言った手前、引っ込みがつかなくなる。つまり「実現せざるをえなくために宣言する」わけだ。また、言葉にすることで、自分の決意を再確認することもできる。ちょうど女のコの恋愛相談のようなものだ。すでに気持ちは固まっているのに「○○くんに告っても大丈夫かな?」「彼と付き合った方がいいかな?」などと相談を持ちかけ、相談相手のお墨付きを貰うことで、安心してアクションに移せるようになる。西くんは、やるべきこと、やりたいことを言葉にし、自分で自分の想いを再確認、そして退路を断たないと、第一歩が踏み出せなかったのではないだろうか。
ただし、実行することが正しいとは限らない。西くん一行が桃源郷から脱出した後、シーンは巻き戻り、オープニングとは少しだけ違う人生が始まるのだが、映画はそこで終わる。その後のことは描かれていない。西くんとみょんちゃんがやり直した人生がハッピーなのかは、誰にもわからないのだ。「悪いヤツもたくさんいる社会であっても、そこで生きていきたい」と言った西くんは、次の人生もままならないかもしれないことに気づいていたはずだ。それでも、自分の可能性を信じたいから、想いを高らかに宣言することで勇気を振り絞り、怒濤の勢いで突っ走る。その言葉には、説教くささや、説明ゼリフくささはない。むしろ、生まれ変わろうとする西くんの想いの強さがはっきりと伝わってくる。そして、西くん以上に弱っちい文系男子であるボクは、その愚直さ、無闇さに勇気づけられる。「想いを言葉に乗せれば、可能性の扉が開けるのかもしれない」と。
映像については、言うことナシ。無闇なパワーとスピード感にあふれ、オッパイが揺れまくる湯浅映像は、でかいスクリーンがよく似合う。2D、3D、CG、実写がグニャグニャと混ざり合う様子は、観ていて、とにかく気持ちがいい。あと何回か観に行こう。
あと、声優については賛否両論あるようだが、アホの坂田演じるみょんちゃんのお父さんはハマっていたと思う。甲斐性ナシの上に、女癖の悪いダメなオッサンのイメージにピッタリだ。さすが、日本で最も成功したアホ(笑)。
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