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2008/11/05

呪いなきオタク中学生

先日「雑誌『Hana*chu→』曰く、ハルヒダンスが中学生の間でちょいと熱いことになってるらしいよ」というエントリを記した。エントリをお読みいただければわかるが、雑誌記事中に女子中学生のコメントがあるわけじゃなし、正直な話、当時は「女子中学生はみ~んな『ハレ晴れ~』の振りをマスターしてる!」と言い切ることはできなかった。「もし、ファッション誌読者=ケータイ小説読者が『ハレ晴れ~』に興味があるなら、クラスのラノベ君と仲良くしてみてほしい」というエントリのオチに対して、ちょうだいしたのだろう

先入観なく受け入れられるのだろうか
という、はてブコメントについても「おっしゃるとおり、確かに難しいのかなぁ」なんて共感したりしていた。

が、ここ最近、ちょっと認識をあらためようとしている自分がいる。というのも、いまだ言い切ることはできないまでも「ホントにちぃとは熱いのかも」と思わせてくれる雑誌記事にいくつか出くわしたのだ。

ひとつめは、やっぱり『Hana*chu→』。その10月号では「さぁ、2学期! ウチら花の中学生 やっぱ学校オモロー!」なる大特集が展開されている(まるで余談だが、こんくらい、やたらなテンションの惹句、キャッチの書ける立派なライターに私はなりたい)。

これがホントに大特集で、全国の読者を対象に、通学カバンの中身やら部活動自慢、給食自慢、学校の名物、学年別制服改造に関する暗黙の了解事項など、中学生活に関するありとあらゆることについてアンケート調査を敢行。代表的な回答や一風変わった回答を学校名付きで紹介している。

で、注目したいのが「全国中学生に聞きましたーっ! いま『お昼の放送』でコレかかってまーすっ!」。「給食の時間に流れる校内放送では、どんな曲がかかっていますか?」という調査項目だ。

お昼はオルゴールミュージック(って古い?)なんて思ってたら、みんなの学校ではMステ並みのヒット曲オンパレード♪
とのキャッチのとおり、北海道江別野幌中学校では大塚愛の『ロケットスニーカー』が、そして神奈川県横浜女学院中学校ではPerfume『ポリリズム』、茨城県佐野中学校では絢香『おかえり』、広島県廿日市中学校では羞恥心『泣かないで』が流れていますよ、といった具合。そのほか『ポニョ』の歌とか、宇多田ヒカルとか、いきものがかりとか、紹介されている24校がセレクトした楽曲、ミュージシャンは、どれも売れ線ばかりなのだが、その中にバッチリ入っているわけだ。岩手県盛岡仙北中学校の『ハレ晴れユカイ』と、秋田県大館第一中学校の『もってけ! セーラーふく』が。

繰り返すが、これは読者対象のアンケート結果。曲を流すのは放送委員や放送部員だろうが、『Hana*chu→』編集部に「ウチのガッコの昼メシ時には『ハレ晴れ~』が流れてるよ」とレポートしたのはファッション誌の読者だ。そんなオサレさんたちが、ちゃんと『ハレ晴れ~』や『もってけ!~』の存在を認識しているわけだ。そして、わざわざアンケートに書いてよこすのだから、おそらく愛聴していたり、面白がったりしているのだろう。

もうひとつの記事は、新潮社の女子中学生誌『nicola』12月号「まりきょんがたまる! 渋谷&原宿クルーズ密着!!」。同誌一番人気なのだろう専属モデルの西内まりや日南響子(ふたりの名前を合わせて「まりきょん」のようだ)が、自身も通う(たまる)という原宿と渋谷のプレイスポットを紹介する企画だ。

カラオケボックス「歌広場 渋谷センター街本館」を紹介するカコミには、ふたりのカラオケレパートリーが載っているのだが、まりきょんのきょん担当、日南のセレクトが異常に偏っていて面白い。『もってけ! セーラーふく』に、ALI PROJECTの『禁じられた遊び』(麻生太郎閣下も大好き『ローゼンメイデン』のアニメ版の主題歌)と『恋せよ乙女』。全7曲中3曲は、そっち系だ。ニックネームが「きょん」だからだろうか。

同ページ中には、ふたりのお気に入りグッズを相撲の番付形式(一番好きなものが横綱。以下、大関、関脇、小結~と好きなものの名前が並ぶ)で紹介する「まりきょん場所☆私物番付」という企画もあるが、こちらでもきょんは魅せてくれる。その大関は「ヲタまんが」。『らき☆すた』と『xxxHOLiC』がお好みで、お気に入りのヲタまんがは「友達に借りたり、アニメイトに行って見つけたり」するそうだ。またまた繰り返すが、アリプロを高らかに歌い上げ、アニメイトで『らき☆すた』を買うのは、ジュニアモデル、女子中学生の憧れの的だ。

ファッションにバリバリ興味関心を抱きながら、なんなら自らがファッションリーダーでありながら、給食の時間に流れる『ハレ晴れ~』を楽しみにし、アリプロを熱唱する女子中学生は「呪いなきオタク」とでも言うべき存在だ。「オタク vs オサレ」「オタク=カッコ悪い」という従来のオタクにまつわる呪縛を易々と飛び越える。

『電車男』のヒット以降、いかにもなイケメンさんがテレビで「オレってオタクなんスよ」と知った風な口をきくことも珍しくなくなった。しかし、ヤツらの指すオタクコンテンツは『ガンダム』『エヴァンゲリオン』『スターウォーズ』がせいぜい。そんなもん、とうの昔に、ごくごくフツーのユースカルチャーに組み込まれてるっつうの。

その点『もってけ!~』やアリプロは、まだまだ一般性が高くない。しかし、彼女たちは、それが面白く、キャッチーだと感じられさえすれば、喜んで乗っかるし、そのことをあっけらかんと表明する。そこには、なんらの照れもなければ、マニアックを気取りたがるイケメンくんのようなスカしたカッコつけもない。若いっていいなぁ。

【追記】
ただ『Hana*chu→』の記事については、いい意味で、眉に唾つけて読んだ方がいいのかも。同じく10月号の別の特集のタイトルが「スクープ! 中2病 vs 中3病 これが実態だっ!!」。学校に慣れてきてハシャぐ中学2年生の取りがちな行動を評して「中2病」、受験を控え、学校にも飽きてきた感のある中学3年生のルーズで諦念している感じを「中3病」と呼んでいるだけで、ネットで語られる、いわゆる中2病とは意味は違うものの、このフレーズをファッション誌で使っちゃう感じってどうよ。『ハレ晴れ~』の振り付け特集を組んじゃうのと合わせて考えてみるに、たぶん編集部内にいるぞ。ファッション誌エディターのふりをしたオレらのご同輩が。

【追記2】
きょんたちには、多少、中川翔子あたりの影響は感じなくもないが、そのあり方は、決定的に違うように思う。中川の場合、アイドル=みんなの疑似彼女、という“開かれた”存在ながら、あえてオタクという“閉じた”カルチャーにコミットしているというギャップがある状態を自身がチョイスしている感がある。実際、以前取材したとき、マネジャー氏が「その手の話になると、ボク、さっぱりわからないし、話が長くなるんで、放っとくんですよ」と笑っていた。放っておかれてOKということは、さして自分の好みを理解してほしいとは思っていまい。むしろ、いわゆる「一般人」とのギャップを放置しておくことで、そのズレから生まれる不思議ちゃん的雰囲気を自らの魅力に転化しているんだろう。

それに比べると、きょんは、カラオケの十八番として、平気で大塚愛とアリプロを並べちゃう上に、それについて、中川風の、いかにもオタク的な理屈をこねくり回した解説を加えたりはしない。オタクに対するコンプレックスやディスコミュニケーション感が希薄だ。「ギャップで面白がらせよう」とか「理解してほしい/ほしくない」といった思惑はあまり感じられない。好きですが、なにか? ってなもんだ。やっぱ若者スゲー。

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