2007/01/20

青橋由高インタビュー第5回(最終回)「官能小説家なりました!~さよなら」

⇒第4回はこちら
――さっきから気になってたんですけど、先生の自虐系のボケに対して、編集さんが即応したり、わざとスルーしたり、ちゃんと笑いを広げにいっているのを見てると、作家と編集者のいいコンビネーションができてるんだなぁ、って思えるんですよ。今日、作家取材ってことで「厄介な人だったらどうしよう?」とか思ってたんですけど、その役割演技というか、連携のおかげですごくスムーズに取材できてる気がするんです。ホントにありがとうございます。
青橋 いつも、こんなに和やかならいいんですけどねぇ……。たとえば、〆切遅れると催促のメールが来るじゃないですか。それはおっかなくてしょうがないんですよ。
――すごく判ります(笑)
青橋 だから、金曜日の夜にメールがないとうれしいんですよ。「ああ、土日生きながらえた」って(笑)
――ええ、ええ! 痛いくらい判ります。
青橋 ところが、たまーに土曜日に電話かけてくるんですよ、ご自宅から。「仕事してますよー」って。
――いい意味でプレッシャーになりますよね。
青橋 向こうがそうやってサボってない、手を抜かない以上、こっちもサボれないし、手を抜けなくなりますよね。私自身、サボり癖があるんで、一回どこかで手を抜いたら、坂道を転げ落ちるかのように行っちゃうと思うんですよ。だから、そういう電話があると、決まって「〆切は遅れますけど、手だけは抜きませんから」って言ってます。手を抜いたらオシマイですよ。もし、それでそこそこの数字が出ちゃったら「ああ、もうこれでいいや」ってなりますから。
――やっぱり、ちゃんと編集さんの意図や希望が先生に通じてるし、逆もまた然りだし、お互い、それに応えてる感じがするなぁ。
青橋 その代わり、付き合いが長いせいか、さっきも話しましたけど、新しいことを実験する、何かフェアとか、っていうと私が駆り出されるんですよ。
――実験要員だ(笑)
青橋 モルモットですよね(笑)
――それって、作品のクオリティや売り上げが安定してるからじゃないですか? 作品自体がダメだったり、イマイチ売れてない作家さんだったりすると、フェア自体の効果測定ができないじゃないですか。ある程度以上売れる作品の売り上げがフェアによってナンボ上積みされるかを知りたいんでしょうから。
青橋 いや、違うと思いますよぉ(笑)。フェアなんか知らないうちにやってますから。本屋に行ったら「あっ、なんかフェアやってる」って感じなんですよ、ホントに。
――内容に関して編集さんのディレクションってあるんですか?
青橋 いや、プロットと本編でメインヒロインが入れ替わるって話じゃないけど、中身はかなり任されてますね。2作目くらいまでかな、内容について指摘があったのは。ただ、キャリアを積んできたこともあるから、内容的にも、部数的にもハードルをだんだん高く設定されている感じはしますね。
――しかも、読者も、青橋作品がどんなものか判ってきているというか、目が肥えてきてますよね。
青橋 だから、新刊発売後1カ月くらいは怖いんですよ。「今回はハズレだった」って言われるんじゃないかって。「もう終わった」とか。前に比べて落ちたと思われるのがホントに怖いし、自分自身「もうピーク過ぎたんじゃないか」というプレッシャーを常に感じながら書いてます。おかげさまで、最新作(当時)の『あねらぶ』が部数も評判も一番いいんで、ちょっと安心してるんですけどね。「これで、もうしばらくおまんま食えるな」と(笑)
――ただ、最初の読者であり、しかも、日本一ジュブナイルポルノを読み込んでいるだろう編集さんの目をパスしてるんだから、そこまで怯えることもないのでは?
青橋 確かにそうですね。だから、原稿を渡す時に毎回聞いてますから。「大丈夫ですか?」「ホントにお世辞言ってませんか?」「つまんなかったら、つまんないって、さっさと言ってくださいね」って。お世辞なんだか、本音なんだかは知りませんけど、一応、その原稿でOKはいただけてます(笑)
――編集さんにとっても、おまんまを食えるか食えないかの問題だから、お世辞なんか言いませんって。ちなみに、一番売り上げがよかったり、手応えを感じたりした作品って?
青橋 たまに読者の方に「どの作品が好きですか」って聞くんですけど、ホントにバラバラなんですよ、これが。普通、これだけ書いてれば、代表作ってありそうなものなんですけどねぇ。
――確かに(笑)
青橋 どれが飛び抜けて売れてるってのもあまりないみたいですよ。
――裏を返せば、すべて高評価ってことですよね。
青橋 3割弱くらいは残すけど、ホームランはないぞ。そんな7番打者(笑)
――いやいや、エースなんですから(笑)
青橋 確かに100万部とかいってみたいですけどね。
――今、官能小説に限らず、文芸の世界で100万部ってのはちょっと……。『電車男』みたいな例もありますけど、あれはネタ本ですから。ああいうネタというか、飛び技でもないとムリですよ。映画化やドラマ化なんてオプションがあってもムリな作品も山ほどあるんだし。
青橋 やっぱりかぁ(笑)。でも大ヒット飛ばして、それで一発で消えるよりも、ずっと長くやっていきたいな、ってのはありますけどね。大ヒットなんかすると、絶対勘違いしますから。こっそり日陰で生きていこうかな、と。
――だから、エースなんですから!(笑)
青橋 いや、日陰は日陰なんですよ。オタク業界、出版業界の鬼っ子(笑)
――ああ、ジャンルの性格はそうかもしれませんね。
青橋 それを忘れちゃいけないんです。ポルノが明る過ぎたりしたら、なんか違うじゃないですか。「日陰でも立派に育つ雑草になるぞ」と(笑)
――最後に目標まで掲げていただいて。今日は本当にありがとうございました!
青橋 こちらこそ、ありがとうございました。すみませんねぇ、バカ話ばっかりで。
――いえいえ、面白いお話ばかりで(笑)
青橋 (担当編集氏に向かって)あっ、そういえば、対インタビュー用の口裏合わせとかネタ合わせとか全然しませんでしたね。
――それを僕の前で言っちゃダメじゃないですか! っていうか、ネタ合わせって何!?
【fin……?】

以上が一昨年末のインタビューのほぼ全文なのだが、原稿の流れに乗せにくかった散発的な質問とその回答については、カットさせていただいた。そこで、最後に、それらの言葉の中でも、特に印象的だったものを簡単に紹介しよう。

本当の意味で心に残るのは、映像よりも紙媒体だと思うんです。たとえば、小説やマンガの中の好きなシーンって「あのページの○行目」とだいたいの場所を覚えておくことができるじゃないですか。「左ページのここら辺にあったな」とか。でも、同じ小説、マンガ原作の映画があったとして、そのシーンを「○時間○分○秒ごろ」って記憶するのは難しいですよね。このリアルな場所や位置としてシーンを記憶できることというのは、紙ならではの強みですよ。
たった1行、数文字で大きなインパクトを与えられるのも小説の魅力ですよね。ミステリーなんか特にそう。綾辻行人さんの『十角館の殺人』の最後の1行なんか「この1行のためにすべてがあったのか」とゾクゾクさせられました。しかも、たったの1行で語られている分、そのシーンを再現した映像よりもインパクトは大きくなる。ジャンルは違うけど、あの境地を目指したいですよね。
私、(ライバルレーベルと目される)キルタイム(コミュニケーション)の「二次元」シリーズって普通に好きなんですよ。私自身もそうですし、美少女文庫も、先方もそうだと思うんですけど、レーベルカラーがキレイに棲み分けされているし、とりたてて敵視してはいないんじゃないですか。共存共栄できればいいですよね。作品のバリエーションが広がるし。いつか先方からお声かかんないかな? って、編集さん、目が怒ってますね(笑)

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2007/01/18

青橋由高インタビュー第4回「絶対無敵官能小説家」

⇒第3回はこちら
――読者層って、だいたいどのへんだと思われます?
青橋 (美少女文庫)創刊当初は19歳、大学生くらいをメインターゲットに想定してたみたいなんですよ。ギャルゲーってあるじゃないですか? 18禁ゲームとか、あれを買う人たちあたりがターゲットなんじゃないですか。20代前半くらいから? でも、今や16歳の作家さんもいますからねぇ。
――そのあおぞら先生の登場っていうのも今回の企画のフックになってたりするんですよ。こういうチャレンジができるってことは、レーベルや業界が元気がいい証拠だと思うんで。先生の作品の読者層ってお判りになります?
青橋 本屋さんなんかで見てると、って、なんで作家が自分で客層をリサーチしてるんだか判らないですけど(笑)、その20代前半の方はもちろん、サラリーマンの人とかも結構買ってくださってますよ。あと、年配の方とかもいたし、結構バラつきがあるみたいです。女性が買ってるのを見たこともありますから。女の人からメールもらったこともありますし。
――どんな内容でした?
青橋 「もっとエグくしてください」って。
――ハハハハハ。読者の貴重なご意見だし、お答えしなきゃ(笑)
青橋 ただ(美少女文庫は)アンケートハガキを挟み込んでないから、正確なところはほとんど見えてないですね。売り上げの数字なんかを見ると読者さんが定着してくれている感じはしますけど。あと、私はブログをやってるから、感想も来ますけど、そういうのを送ってくれる人って、貴重だし、珍しい存在だと思うんですよ。そのほかの99%の人たちとは作品との付き合い方が違うんだろうな、と。
――絶対にそうですね。基本的に九分九厘の読者の方はヌキ目的、ポルノメディアとして買ってるわけですから。アンケートハガキがあっても、それを返送するってことは、それこそさっきの僕の性癖暴露じゃないけど、イコール、自分が何でヌいているかをカミングアウトすることになっちゃう。普通は二の足踏むでしょうね。僕みたいにブログを開いて書評してるヤツがちょっとおかしいんであって。
青橋 でも最近増えてますよね、書評する方。
――増えてますねぇ、おかしなヤツらが(笑)
青橋 ホントは人には言えないけれど、でも言いたい感じというか。基本的に日陰にいるんだけど、ちょっとだけ表に出たい感じがあるんだろうなぁ。「トラック焼けしちゃうよ」みたいな(笑)
――せめて窓から腕だけ出したいって感じで。確かに読者の数が増えた上に、ネットっていう、個人が自由にアウトプットできるメディアもある。それなら好きな映画について語るような気分で書いてみようって人が出てきてもおかしくはないんでしょうね。ブログやmixiなら、ある程度、素性をごまかしながら書けますし。僕はほぼ丸出しですけど(笑)
青橋 でもやっぱり、読者の方の大半は顔が見えないから、作る側はいっつも手探りなんです。読者に媚びを売れない手探り状態だからこそ、いいものを作っていくしかないっていう思いはありますよ。それに、媚びた瞬間、きっとなんか違うものになっちゃいますから。きっちりと書いていくしかない。
――先生の考える「きっちりとした作品」とは?
青橋 作家さんには2通りあるらしいんですよ。要するにストーリー派? ストーリーを最初に考えて、エロをあとから肉付けしていくタイプ。それと、エロのシチュエーションとかがまずあって、ストーリーは後付けしていくタイプ。私はエロが先なんです。で、そのあとにストーリーとか設定。とりあえず「こういうシチュエーションで」とか、かわいいコとか、エッチなシーンとか、コスチュームを考えて。そこから、ストーリーをでっち上げてますね。
――きっちりとした作品をでっち上げ(笑)
青橋 あくまで官能小説ですから。エロが主軸にあって、それでいてちゃんとしたストーリーがあればいいかな、という作りを目指しています。もちろん、エロが後付けでも、素晴らしい作品を書く作家さんはたくさんいらっしゃいますけど、私はそっちの方が書きやすいですね。
――なるほど。
青橋 と思ってますけど、上手くいかないのが……
――いやいや、上手くいってるじゃないですか。
青橋 「エロ心を忘れちゃいけない」って、いつも言われてるんで。
――エロ心!
青橋 でも、ホントにそういう目的で買っている人たちを絶対に裏切っちゃいけないんで。一回でもハズレを引いちゃったら、自分の作品だけじゃなくて、レーベル自体が否定されちゃいますからね。ほかの作家さんにも、会社にも迷惑がかかっちゃう。それは気をつけてます。だから、自分のブログで最近買った本の紹介なんかもやってますけど、間違っても、ほかの人の作品、それがたとえ他社のものでもけなすこともしないようにしているんです。
――ジュブナイルポルノを読むのって、いわゆるオタクが中心だと思うんですよ。『電車男』人気なんかのおかげで、オタクの裾野がウワッと拡がってはいるものの、現状、そのすべてにジュブナイルポルノがリーチしているわけじゃない。狭いオタクの世界の中だけでも、まだまだ取るべきパイがいっぱいあるのに、ほかの作家さんの足をひっぱることは、先生の得になる以前に、その芽を潰すことになる。そんなバカなこと、やってる場合じゃないですよね。
青橋 そうなんです。それに、そもそもけなすことって嫌いなんですよ。作品の好き嫌いを書くのはアリだと思うんですけど、善し悪しを言っていいのは、読者さんだけ。私じゃない。だから、本当に面白かったもの、良かったものだけを薦めるようにしています。
――ムダに褒めそやす必要はないし、悪いことを隠すことも絶対にやっちゃいけないんだけど、“これから”のジャンルなんだから、そうやってポジティブな面を押し出す姿勢は断然正しいですよ。
青橋 ブログで自分の作品について触れるときも同じスタンスなんです。後書き代わりに作品解説をしてますけど、言い訳ともいいますが(笑)、それも、裏話みたいな読者サービスはしても、マイナスになるようなことは絶対に書かないようにしています。私生活の愚痴は書きますよ。「担当さんが〆切についてなんか言ってきた」とかって愚痴は書きますけど、作品については、もう手を離れた以上、読者のものですから。作品について「ああしたかった、こうしたかった」とか、キャラクターについてどうのこうの言うのは、やっちゃいけないことだと思うんです。
――それはなぜ?
青橋 (著書を手にしつつ)キャラクターやストーリーについては、これで完成品なんですよ。それを補足することはあっても、足を引っ張っちゃいけない。どれも愛着あるし。それに、イラストさんも関わっていますから。イラストさんと私と編集さんの共同作業で作ったものだから、それを1/3を担当した私が崩しちゃいけないと思ってます。
――素晴らしい!
青橋 この世界は「ナポレオン」や「ナポレオンXX」が蒔いた種に、キルタイム(コミュニケーション)さんが肥料と水をやってくれて、育ってきたという歴史がある。そして、今、ようやく実りの時期を迎えつつあるんだと思うんです。この果実をみんなで大切に守っていければいいですよね。で、最後は私がオイシイところを刈り取れればいいなぁ(笑)
――盗っちゃダメですって! せっかくいい話をしてたのに、なんでオチを付けなきゃ気が済まないかな?
⇒第5回に続く

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2007/01/15

青橋由高インタビュー第3回「増ページ~官能小説家は交渉中!」

⇒第2回はこちら
――「(文章量を)削れ」ってオーダーはあるんですか?
青橋 もう『あねらぶ』とか……。ねぇ?(笑)
――(取材現場に並べた著書を眺めつつ)確かに束(つか。本の厚さのこと)が違いますね。
青橋 あっ、だから、最近は〆切のことだけじゃなくて、それも怒られるんだった(笑)。とにかく「長い」「削れ」「ページを抑えろ」と。当然、こっちは「イヤだ」と。
――ページ数が増えれば単価が上がるし、売れ行きにも影響するから、版元さんの気持ちもわかりますけどね。
青橋 それはもちろんわかってるんですけど、最近は毎度ページ数の相談をしてますね。「二段組みにしませんか?」「上下巻にしませんか?」って言ってみるんですけど……。
――当然……。
青橋 ダメですねぇ(笑)。
――でも、スゴいじゃないですか。普通、冊数を出せば出すほど、アイデアって枯渇しそうなものなのに、逆にボリュームが出てくるっていうのは。
青橋 なんなんですかねぇ。ダラダラしちゃってるんじゃないかって気もするんですけど……。
――そうですか? 変に冗長になってるってイメージはないですよ。
青橋 セリフが多いから行数が増えてるっていうのは自覚してるんですよ。会話劇は書いてて楽しいから、つい筆が進んじゃう。しかも「普通のパートが楽しい」って言ってくださる読者さんも多いですし。なんなら「エロくないけど楽しい」って言われることも少なからず……。それ、ホメてんのかよ!(笑)
――「エロくない」は冗談にしても、その評価って案外多いと思うんですよ。「ラブコメとして楽しく読めた。面白かった」って。
青橋 「全然エロくねぇ」とか「使えねぇ」とか言われると困りますけど「面白かった」と言ってくれれば、満足していただければ、それはそれでありがたいですね。ただ、やっぱりフランス書院ですからね。
――官能小説としての機能性は機能性として大事にすべきですよね。
青橋 そう、機能性(笑)。頑張って書いてるんですけどねぇ。エロ、手抜きはしてませんよ。
――それはさっき(第2回)うかがいましたし、実際、勃ちますけどね。って、なんで僕は、こんなところで性癖を暴露してるんだか(笑)
青橋 もちろん「エロい」って言ってくれる読者さんもいますけど、ただ、それ以上に「笑えた」が多い(笑)。『恋妹(~彼女はふたご!)』の「最初のおバカな掛け合いのところが面白い」とか、そういうのが結構多いですね。
――ああ、その人の気持ち判るかも。
青橋 ただ「文章がヘタクソだ」とも、さんざん言われるんですよねぇ……。
――へっ? 今回取材に来たのは、一番書ける人だからなんですけど……。
青橋 文章をほめられたことないんですよ。同人ゲームのシナリオ(ソフトさ~くるクレージュ『DISCODE』シリーズ、田辺組『Hate sty night』など)なんかもやってますけど、某メーカーの担当さんも「青橋さんの文章は上手くはないですけど、味がありますね」って。ほめてたのかなぁ、あの人?
――いや、たぶん残念ながら……(笑)
青橋 この方(担当編集氏)も「上手くない!」って、はっきり言いましたからね。
――(担当編集氏、即うなずく)。そこ、即答したらダメじゃないですか!(笑)。実はジュブナイルポルノって官能表現がすごく難しいポルノメディアだと思うんですよ。作風にもよるんでしょうけど、ラブコメの場合、日常パートはアニメ的というか、ライトノベル的な明るさや軽さがなきゃ面白くないし、とはいえ、官能パートまでそのトーンで書かれちゃうと、勃つものも勃たない。だから、いわゆる官能小説的なハードさも盛り込まなきゃいけない。でも、隠語バリバリでゴリゴリの官能表現にしちゃうと、それはもはや“ジュブナイル”ポルノではないわけで。
青橋 まあ、そうですね。
――でも、青橋先生とか、わかつき先生とか、森野先生とか、河里先生なんかは、その軽くて明るい日常パートとハードめの官能パートをすごく上手にリレーさせているイメージがあるんですよ。一般的な官能小説とはちょっと違う、ジュブナイルポルノらしい官能表現のスタイルも持っている。だから、美少女文庫のサイトでも先生方を「エース」って呼んでるんでしょうし。
青橋 (吐き捨てるように)いや、あれはお上手言ってるだけッスよ。わかつきさんたちこそがエースですから。
――何を自虐的になってるんですか(笑)
青橋 だって、いっつも(担当編集氏に)言われるんですよ。「わかつきさんたちがエースですから」って。
――それは、ほら、逆にアレですよ。わかつき先生の前では「青橋先生がエースです!」って……(担当編集氏、沈黙)。あれ??? 僕、地雷踏みました?(笑)
青橋 ほめられませんよぉ。いつも「まあまあですね」とか「そこそこですね」って。「売り上げどうですか」って聞いたら、それも「そこそこですね」(笑)
――実際、発行部数ってどれくらいなんですか?
青橋 さすがに具体的な数字はバラせませんけど、おかげさまでそれなりに出てるなって感触はあります。それに、毎回だんだん上がっていますし。
――すごいじゃないですか!
青橋 最近は「レーベル全体の売り上げが伸びてるんだから、これだけ(の部数)いけるものをお願いします」ってこともよく言われるようになりました。読み手が増えている分、一層手は抜けなくなってますね。もともと手を抜いたことなんて一度もないですけど。
――そりゃそうでしょう。
青橋 今('05年12月下旬)、次回作(『メイドなります!~おしおき』)の第一稿を入れたばっかりなんですけど、その完成度って50%くらいなんですよ。原稿はできあがってるんだけど、全然面白くない。だから、これからイラストが上がってくるまでの1カ月の推敲期間のうちに、ヘタしたら数十ページ? 書き足したり、削ったりするんじゃないですかね。
――いつもそのくらいリライトするんですか?
青橋 納得するまで、ひたすら書き替えますよ。「そこまでやらなくていい」ってとこまでやりますね。『あねらぶ』も「もう完成。OK」って言われてたんだけど、ちょっと待ってもらって、後半の学校のシーンを30ページくらい書き足したんですよ、確か。「これを入れないと、ヒロインの立場がなくなっちゃうから」って。
――そういう経緯で、あのボリュームになったんなら、ファンはもちろん、制作側も納得なんじゃないですか。
青橋 ホントはあと20~30ページ書きたかったんですけどね。「もう勘弁してくれ」と(笑)
――340ページ?
青橋 いっそのこと『終わりのクロニクル』を目指してみたいんですけどねぇ。背の高い直方体の本を出してみたい(笑)
――表1(表紙ページのこと)の幅と束が大して変わらない(笑)
青橋 そう。「単独で縦に立つよ」って(笑)。やってみたいですけどね、一回。
⇒第4回に続く

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2007/01/11

青橋由高インタビュー第2回「甘姉~彼女は触手少女!」

⇒第1回はこちら
――タイトルってどうやって決めるんですか?
青橋 最初の打ち合わせでシチュエーションやキャラクターなんかのアウトラインを決めた後、タイトル案をいくつか持って行けば、あとは編集部で候補を絞ってくれるって感じですね。『あねらぶ』でちょっとテイストが変わったかな。それまで、私の作品ってタイトルの縛りがあったんですよ。
――ああ、基本的に「漢字二文字~彼女は○○」とかですよね。
青橋 ええ。最初に『微熱(~彼女は水泳部!)』とかにしちゃったもんで。だから『あねらぶ(~彼女は三姉妹!)』も最初は『甘姉』ってタイトルだったんですよ。それが、紆余曲折あって『あねらぶ』になったという。
――『あねらぶ』の方が好きかも。
青橋 タイトルはいつもギリギリまで悩みますね。『約束(~彼女はウェイトレス!)』くらいかなぁ。すんなり決まったのって。「これしかない」ってタイトルだったんで。あとは毎回悩みますね。『(純情~)彼女は剣道部!』なんて、タイトルのためにプロットの方を直しましたからね。
――へ???
青橋 これ、最初は全然違う話だったんです。だけど、その話だと『彼女は○○』って形にできなかった。『彼女はバルキリー』くらいしか思いつかなかったんだよなぁ。
――バルキリーは判りにくいですねぇ。タイトルから内容がさっぱりイメージできない(笑)
青橋 だから「剣道部にしましょう」ってことになって、プロットごと書き換えたんですよ。そんな本末転倒パターンは、さすがにこれだけですけどね。あっ、でも、タイトルからストーリーを考えたこともありますよ。打ち合わせ中、(ファンである千葉ロッテ)マリーンズのこととか、野球の話をよくするんで、そのノリのまま「『彼女は野球部』ってどう?」とか言って、その場で適当にストーリーも作って。一生通らなそうな企画だったけど(笑)
――さっきのバルキリーの話じゃないけど、良くも悪くもタイトルを聞けば、だいたい「こんな話だろう」って内容を想像できますもんね。『世界の中心で、愛をさけぶ』って聞いた瞬間「あっ、この本、オレには用事ねぇや」って判ったように。だから、タイトルから物語が生まれるっていうのもアリなのかも。
青橋 ハハハ。そういう感じです。
――で、実際の執筆の流れは、そのアウトラインを決める打ち合わせがあって、その後プロットを書いて、編集サイドのOKをもらったら、原稿を書き出すって感じですか?
青橋 そうですね。ただ、本編を書き進めているうちにプロットからメインヒロインが変わっちゃうこともあるくらい、プロットっていい加減だったりするんですよ。
――へぇ。
青橋 (担当編集氏、力強くうなずく)即答だもんなぁ(笑)。でも、そうやって入れ替えたところで、今度はサブヒロインの方が評価が高くなっちゃったりもするし、ファンの方の好き嫌いを完全に読むのはムリだから、原稿を書く時「このコ(プロット上のサブヒロイン)をメインにした方が面白いな」と感じたら、そのノリを重視して書いちゃうんです。
――編集部から元に戻せとは……。
青橋 言われませんね。それよりも「とりあえず納期までに上げろ」と。最近、そればっかだなぁ(笑)
――それ、僕も耳が痛いです(笑)。だいたい打ち合わせから入稿までってどれくらいの日数かかるんですか?
青橋 2カ月ですね。
――早えー。
青橋 (伏し目がちに)理想論は……。
――目を見てしゃべってくださいよ!(笑)
青橋 理想論は、ですよ……。だいたい、3カ月くらい、2カ月半くらいですかね。
――にしても速筆ですよ。じゃあ、年間3~4冊くらいのペースで出す感じですか?
青橋 私は「年間3冊」と言ってはいるんですよ。「3冊くらいがいいんじゃないですか」と。
――はい。
青橋 ただ、この方(担当編集氏)は「4冊だろう」と。「●●先生は年1冊じゃないか!」って思うんですけどねぇ(笑)
――ハハハハハ。よその版元の作家さんを引き合いに出しても(故に伏せ字)。
青橋 ダメですねぇ。逆に(年4冊以上刊行する)わかつき先生と比べられたりしちゃって(笑)
――作家さんに対する毀誉褒貶いろいろあるから、先生的にはあんまりよろしくない存在なのかもしれないんですけど、2ちゃんねるの「エロ漫画小説」板ってあるじゃないですか。あそこの該当スレッドなんかを見ても、年間2~3冊だと「ああ、今年は少なかったね」みたいな話題になってますよ。
青橋 あっ、やっぱりなってます?
――先生に限らず、どんな作家さんに対しても刊行ペースの話題は持ち上がりがちですね。ファン、特に2ちゃんの住人みたいな“強い消費者”の生のコメントなんて、作家さんにとってプレッシャー以外の何物でもないんでしょうけど、やっぱり「できればたくさん読みたい」って思ってるみたいです。ファンなんだから、当然っちゃあ当然ですけど。
青橋 みんなから「『季刊青橋』にしろ」ってよく言われるんですよねぇ。
――四半期に1冊ずつ?
青橋 来年('06年)は「4冊書け!」って厳命され……、(担当編集氏をチラ見しながら)たんだよなぁ、さっき(編注:見事達成!)。
――着想の話に戻らせていただきたいんですけど、一番キモとなる実用部分でも「匂いをかがれるフェチ」だったりとか「シッポを使ってアレコレ」だったりとか、作品毎にいろんなバリエーションを用意してますよね。ネタはどこから?
青橋 その時、読んでる本とかですかね。直接的なネタじゃないんですけど、ヒントとかが出てきたりするんで、メモを取ったりはしています。反対に自分の嫌いなプレイとか、女の人が読んで「イヤだな」と思うものは書かないようにもしてますね。
――自分の嫌いなプレイはまだしも、女の人の嫌うプレイがイヤなのは、なぜ?
青橋 イラストレーターに女性の方もいらっしゃいますし。
――あっ、そこにも配慮されるんですね。
青橋 あとは自然にネタが浮かんでくる感じですかねぇ。「ハッピーエンドにしよう」ということを念頭に置いておいて書いていると、それに見合ったアイデアがいろいろ出てくるんですよ。それをあとからプロットを無視して入れちゃうこともあります。ただ、自分自身、どこまで本気なのか判らなくてボツにしたネタも多いですけどね。
――ボツったネタって?
青橋 毎回言ってるのは「触手出そう!」
――また、先生の作風にはえらい不似合いな小道具ですねぇ(笑)
青橋 『彼女は触手少女』(笑)
――それがもし出たら、僕は大絶賛させてもらいますよ。「買え! とにかく買え! これ書いたヤツ、たぶんバカだから」(笑)
青橋 決めゼリフは「キルタイム(コミュニケーション)に負けるわけにはいかないのよ!」(笑)
――で、先生の場合、女の人が読んでもイヤにならない表現で、かつ、ハッピーエンドになるんですよね。触手にウワーって攻められておきながら。
青橋 もちろん!
――素晴らしいまでに下らないな(笑)
青橋 でも、登場キャラクターにはどれも愛着があるんで、全員ハッピーエンドにしたいんです。だから、実際の作品も書き始める前から本編のエンディング、「誰と誰が結ばれる」っていうエンディングに加えて、各キャラクターのその後の物語もある程度考えておくんですよ。以前、それを編集さんに言ったら、驚かれました。
――確かにブログでスピンオフ的な話を書いてらっしゃいますけど、それを事前に考えてたんなら驚きますよ。本編にはまったく必要ないわけですから。
青橋 全員幸せになってもらいたいんで。あと、いつ続編出してもいいように。
――ハハハハハ。
青橋 全作品のうち2/3くらいは、その後の物語を想定してますね。「売れたら書こう」というスケベ心で(笑)
――ただ、基本的に美少女文庫では、続編ってナシだったんですよね?
青橋 だから、シリーズ物にも「第1巻」「第2巻」っていう数字は入れてないんです。『メイドなります!』シリーズ2冊(『メイドなります!~彼女は幼なじみ』『メイドなります!~すくみず』)も、どっちが続編かわからない。
――そうですね。
青橋 私は便宜上1、2って呼んでますけど、どちらから読んでもいいような作りにはしているんです。続編に当たるこれ(『メイドなります!~すくみず』)の第1章には、ちゃんと(1作目となる『メイドなります!~彼女は幼なじみ』の)ダイジェスト的な話を入れてますし。実際、2作目を読んでから1作目に行く人も多いみたいですよ。
――僕、そうでした。
青橋 単独で読めるようにしなければいけないんで、難しいことは難しいんですけどね。ただ『彼女は~』シリーズみたいに、キャラクターでお遊びなんかをすることもありますよ。(巻をまたいでサブキャラクターが)繋がってたりとか。
――そういう小ネタがファンにはうれしかったりしますからね。そこに気づけたことで優越感、って、しょーもない優越感もあったもんですけど、とか、作家さんとの共犯意識が生まれたりしますし。
青橋 確かに読者さんの反応を見ると、ちょっとだけですけど、喜んでくれる方もいるみたいなんで。次のもたぶん繋がるんじゃないかな? あんまりやると、容赦なく削られるんですけどね(笑)
⇒第3回に続く

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2007/01/09

青橋由高インタビュー第1回「作家なります!~ゲームライター」

今からちょうど1年前になる'05年末、フランス書院のジュブナイルポルノレーベル「美少女文庫」の作家・青橋由高先生を取材させていただいた。'06年1月24日発売の扶桑社『週刊SPA!』1/31号「超保存版・上級者のための[活字エロス]研究」特集のためだ。

件の『SPA!』発売時のエントリにも書いたが、先生が過剰なまでにサービス精神を発揮してくださったこともあり、インタビュー自体は、非常に面白く転がったのだが、いかんせん誌面構成の都合上、文字量が少なかった。全インタビューの1/10も載せられなかったのではないだろうか。

そこで、拙ブログでは再三にわたり「いずれ補足情報も含めた取材後記を書く」と触れていた(しかも、先生から、ほぼご了解のコメントをちょうだいしていた)にも関わらず、根っからの遅筆と筆無精で、放置すること1年! 「遅筆で筆無精ってどんなライターだよ」と己にツッコミを入れたくもあるが、この正月休みにようやく重い腰を上げ、インタビュー完全版をまとめることができたので、今回から5回にわたって、その全文を掲載したいと思う。

先生の言葉はいちいちが面白く、また官能小説家、そして、同文庫の「エース」としての矜持も伺える非常に意義深いものとなっている。インタビュー自体が1年前のものである上に、質問者がボクという弱点はあるが、十分読み応えのあるものになったと自負している。青橋先生、ジュブナイルポルノファンはもちろん、まだジュブナイルポルノを読んだことのない方にもご一読いただきたい。そして、少しでも興味を持ったなら、ぜひ、青橋作品を手にしてもらいたい。全国コンビニ、駅売店でも販売する一般誌たる『SPA!』があえて取り上げるだけに、先生は確実に“書ける”作家だ。エロスが大好きな男子(もちろん女子も!)なら絶対に損はないはずだ。

最後になるが、全世界に開けっぴろげになるインターネットにインタビューを掲載することをご快諾いただいた青橋由高先生と美少女文庫の担当編集様に感謝したい。本当にありがとうございました!

※前述のとおり、インタビューは1年以上前に行っています。そのため、現在の状況と異なる部分もあるかと思われますが、ご了承ください。


――まず、すごくベタな質問なんですけど、デビューのきっかけは?
青橋 普通に物書きになりたかったんですよ。学生時代からチマチマしたライターの仕事はあったんで、大学卒業するころには「デビューできるかなぁ」なんて思ってたんです。実際、ゲーム雑誌のライターの仕事が決まっていましたし。
――僕らみたいな雑誌メインのライター仕事ですか?
青橋 はい。でも、決まった2日後に雑誌が潰れまして……。
――ハハハハハ。スタートダッシュ以前につまづいてるじゃないですか!
青橋 ねぇ。さすがに「これはマズい」と(笑)。それで「ゲームのシナリオとか書けるかなぁ」って思って、練習で中編を書いてみたんです。で、書き上げたんだから「これを寝せておくのはもったいないな」と。どこかに送ろうと思って調べたら、フランス書院に「ナポレオンXX(ノベルズ)」(美少女文庫の前身に当たるフランス書院のジュブナイルポルノレーベル)とかいうのがあるらしいことを知ったので、なら、ここに送ろう、と。そして送ってみたんですけど、1カ月、2カ月、3カ月経っても連絡がなくて。「これは落とされたな」と思っていたら、今、目の前にいるこの方(担当編集氏)からメールが届いたのかな。
――ちょっと時間はかかったけれど、お返事はいただけた、と。
青橋 ええ。で、そのころには、もう美少女文庫の企画が始まってたんで「こちらで書いてくれ」という話をもらったんです。
――美少女文庫創刊というと、2003年ごろですよね。そのころは、まだジュブナイルポルノも黎明期だし、認知度も低かった。だから、ライトノベル、要はエロ抜きのものを書いてみよう、という人の方が多かったのかな、とも思うんですけど。
青橋 もともとミステリーが好きで「ミステリー作家になりたいな」と思ってたんですけど、明らかに才能がないのが、高校生くらいで判っちゃって(笑)。で、いろいろ物書きになる道を模索していて、ライトノベルも、その候補のひとつにはあったんですけど、なんだろ? あんまりピンと来なかったんです。作品を送ったこともないですね。
――へぇ、なんか意外な感じが。
青橋 その点、嗜好的に「(官能小説は)たぶん書けるんじゃないかな」という予感がありました。第一、練習で書いたのが美少女ゲームのシナリオを想定したものだったし「官能小説といえばフランス書院」というイメージもあった。で、フランス書院のホームページに行ったら「原稿募集」って書いてあったから送ってみたというのが本音かも。実際、あんまり深く考えてなかったんだろうなぁ(笑)
――ライターデビュー前に取引先が潰れてたのに他人事?(笑)。ただ、実際、予感は的中した、と。それまでにいわゆるジュブナイルポルノを読んだことは?
青橋 これが、なかったんですよ。初めて読んだのは、たぶん、編集部からいただいた、わかつきひかるさん。「売れてますよぉ」とか言われて。実際、読んでみたら「すごーい。面白ーい」って。ただ「これより面白いのを書かなきゃいけないのか」ってヘコみましたけどね(笑)
――先生の作風は基本的に定番ラブコメじゃないですか。この手の作品って、定番であるがゆえに読者を選ばない半面、それを量産し続けると、どうしてもマンネリ化するおそれってあると思うんですよ。
青橋 ええ。
――でも、先生は毎回シチュエーションに凝ることことで、どれもハッピーエンドのコメディでありながら、きちんとそれぞれテイストの違う作品に仕立てている。剣道部だったりとか、スクール水着だったりとか、ヒロイン3人だったりとか。このアイデアはどこから生まれてくるんですか?
青橋 ほかの作家さんは知らないんですけど、私の場合、いつも打ち合わせの時点でイラストさんが決まってるんですよ。
――あっ、イラストレーターさんが先に決まってるんですか。
青橋 はい。で、イラストさんのイメージってあるじゃないですか。たとえばですねぇ、みさくら(なんこつ)さんだったら、こういうキャラや、こういうシチュエーションがお得意だし、似合いそう、とか。そこからシチュエーションを決めて、そのシチュエーションを活かすための設定やキャラクターを考えて、と。みさくらさんだったら「ちょっとファンタジーっぽい話が合うのかな」「じゃあ、悪魔と天使ってどうだろう?」って感じですね(そうしてできあがったのが『悪魔な彼女、天使な妹』)。あと「妹を書いたら、次はお姉ちゃんに行かなきゃな」とか、同じようなネタが続かないように配慮はしてますね。
――スゲーな。「絵を活字で物語化する」って、ものすごい高度な作業じゃないですか。
青橋 いやいや(苦笑)。あと、編集部からのオーダーもありますね。『メイドなります!』シリーズなんかは編集さんとの打ち合わせから生まれた作品です。今でこそいろんな作品がありますけど、美少女文庫創刊当初って、学園物のような「現実系」で行こうってコンセプトがあったんですよ。で、ある日、打ち合わせをしていた時に「ところで、メイドさんっていうのは、現実系なのか否か?」って話になって……。
――確かに(笑)。現実にメイドって商売はあるけど、近所にはいないし、非現実っちゃあ非現実だ。
青橋 ですよね。で、編集さんが「なら、実験だ」と。だから、私が「誰が書くんですか?」って聞いたら、なぜかこっちを見てるんですよねぇ(笑)
――人柱決定!
青橋 「あっ、これは行かなきゃいけないんだな」と。「じゃあ、メイドさんが、いきなり自宅に現れたら面白いだろう」ってパパパッと決めて。ただそれだけのノリで始まった話なんです。
――それが今や人気シリーズだから、わからないもんですねぇ。
青橋 ただ、当時の美少女文庫に続編、シリーズ物ってなかったんですよ。今も積極的には考えてないんじゃないかな。
――マンガなんかにしても、第2巻、第3巻って第1巻より売り上げは落ちがちですからね。だったら、書き下ろしの新作の方が安全かもしれませんね。
青橋 だから、シリーズ化しようって話が持ち上がったときも「コケるかもしれませんよね? 危ない橋ですよね? 誰が渡るんですか?」って聞いたんです。そしたら、やっぱり私を見るんですよ。
――ハハハハハ。しかし、スゴいですね。絵描きさんの作風や、編集サイドの意向を汲んだ上で、きっちり先生の世界観に落とし込めるっていうのは。作家的でありながら、職人的でもあってカッコいいですよ。作家先生っていうのは、僕らライターとは違って、テメーの書きたいものをワーっと書くもんだと思ってましたから。
青橋 同時期に発売する他の作家さんの本のこととかも考えますしね。同じネタでカブったら申し訳ないですから。
――同時刊行の3点が全部妹物じゃ、姉萌えの人は「何を買えばいいんだよ!」ってなっちゃいますもんね。
青橋 ただ、〆切遅らせてるから意味ないんですけどね(笑)。「また、妹で重なってんじゃん」って。
⇒第2回に続く

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2006/05/11

『「ぷっ」すま』に端を発して、妙なところに着地する雑記

一日一歩~青橋由高の特別でない毎日~「テレビって凄いですね」 http://blog.livedoor.jp/aohashi_yutaka/archives/50447524.html
今週の『「ぷっ」すま』内で、草彅剛とユースケ・サンタマリアが『メイドなります!~彼女は幼なじみ』を朗読したところ、著者・青橋由高先生のブログのアクセス数が予想以上に伸びたそうだ。ついでに言っておくと、4カ月ばかり放置していた弊ブログですら、この1~2日、アクセスが増えている。アクセス解析の検索語の項を見ると「青橋由高」の検索数とアクセスの増加数が、おおむねカブる感じだ。青橋先生、ありがとう!

数年前「今年のネット重大ニュース」なんて企画でARTIFACTの加野瀬さんを取材したことがある。綿矢りさが芥川賞を受賞した年だ。当然「りさタン萌え」についても触れてみた。なんでも、受賞直後にARTIFACTに綿矢りさのルックスに触れるエントリをアップしたところ、それから1週間、異様にアクセスが伸びたのだとか。で、加野瀬さんの言葉。

「ニュースやワイドショーで彼女を知った人たちが『どんな人なんだ?』と検索をかけた結果だろう。テレビを観たり、他人と会話をしたりしていて、わからないことがあったら、それをネットでちょっと調べてみる。本を読んでいて、知らない言葉に出くわしたら辞書を引くのと同じで、この行動はすごく正しいネットの使い方だと思う」
冒頭のリンクとボクに降りかかった一件に触れ、なんとなくこれが思い出された。こんなの今となっては、当然も当然の感覚なので、なんとも恥ずかしいのだが「ああ、ネットって本気でカジュアルになったし、みんな、使いこなしてるんだなぁ」と、ようやく実感できた気がする。ホントに人より発育の遅い子だなぁ、俺!

そんなネットユーザー賛歌とは対照的に、ボクには反省すべきがもうひとつある。実は弊ブログ、青橋先生からトラックバックやコメントをいただいているため、「青橋由高」でググると、中途半端に好位置に表示される。ところが、青橋先生の著作のレビューは載っていない。検索すると引っかかるくせに、中身はない。つまり、一番やっちゃいけないSEO対策をしているわけだ(もちろん「図らずも」だが)。

「ファンだから」なんつうトンマ極まりない理由で、年末のクソ忙しい時期にインタビューまでさせてもらっているのだから(しかも、お打ち合わせの場にちん入して、だ)、これは当然是正しなければならない。もちろん、著作のレビューはしよう。

で、もうひとつ、1/24に言ったきり完璧に放置しているインタビューのアウトテイクスも絶対書く!

と言いたいところなのだが、実はこいつが悩ましい。

インタビュー原稿を書く場合、録音した音声をそのまま文字化する「テープ起こし」なる作業を事前にしなければならないので、すでにテキストデータはある。ところが、これが長い。単純計算でざっと3~4万字。『ロッキング・オン』かっつうの! ひとえに下らない質問を連発したボクのせいだ。もちろん、先生の許可をいただければ、の話ではあるが、全文掲載できたところで、まあ、ブログ上で読みたい文字数じゃない。だいたい、全世界に開けっぴろげになる上に、コピーし放題のネットであの一部始終を公開するお許しがいただけるのか、はなはだ疑問だ。とはいえ、先生はどんな質問に対しても、しっかりオチを付けて返してくれるもんだから、オフレコ部分以外を削るのは非常にもったいない。

というわけで、こちらに関しては、形式等々、発表の仕方を検討してみよう。だいぶん前の話になってしまったため(前の話にしてしまったのは、まぎれもなくボクだ)、管理人氏ご自身も覚えていらっしゃらないかもしれないが「楽しみに」と書いて下さった方もいるわけだし、ちょっと考えてみることにする。期待せずに待て!(それこそ、マテ!)

【おまけ】
上記加野瀬さんの取材がらみでもうひとつ「ネットにいる男子は、イケイケ系のキツめのルックスの女子よりも、りさタンとか眞鍋みたいなタヌキ顔の方が好きなんですかねぇ」てな話にも花が咲いた。今「文化系女子」なんつって取り上げられてる女のコたちを眺めてみるに、あながち外れていない気もする。メンタリティってツラに出るわけだし。

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2006/01/24

なにか載りました

banana今日売りの『週刊SPA!』1/31号「超保存版・上級者のための[活字エロス]研究」の一部を執筆いたしました。

執筆内容は、まあ、当然っちゃあ当然のジュブナイルポルノパート4ページ。「ジュブナイルポルノって何よ」「どんなレーベルがあって、どんな作家がいるのか」「『ゲドマガ』なんつう文芸誌も出てまっせ」なんてことを書いています。

「研究」と銘打ってはいますが『SPA!』という媒体、読者層の性格上、歴史・作家研究などをゴリゴリと進めても仕方ないわけで。初稿では「'80年代後半に富士見書房が『くりいむレモン』などのノベライズ版を刊行したのが起源か」だの「21世紀頭ごろには『二次元ドリームマガジン』以外にも、英知出版『ドレグラ』、東京三世社『コミックメガドリーム』といった文芸誌もあったが、あえなく休刊」なんて書いたりもしたのですが、あえてカットしました(文字数も少なかったし)。あくまで、現況を俯瞰する構成になっています。そのため、もしかするとファンの方には物足りないかもしれません。

ただ、手前みそながら、コンビニ、駅売店でも買える一般誌でジュブナイルポルノ各レーベルを紹介し、青橋先生、謡堂先生、『ゲドマガ』岡田編集長の言葉を拾えたことには多少の意義があったような気はしています。ボクの担当外ですが、特集後半の内藤みか先生、尾谷幸憲先生の対談はなかなか示唆に富んでますし。ジュブナイルポルノファンの方はもちろん、エロが大好きな男子のみなさんは、機会があれば、目を通してみてやってください。

あっ、あと、ボク、「コンバンハチキンカレーヨ再」のハタさんと一緒に妄想垂れ流してます。あげく、顔出し。一応ご報告まで。

それと、今後、取材後記なんかもポツポツと書いてみるつもりです。先日のエントリにご本人自ら寄せていただいたコメントのとおり、文字数の関係でとんでもなく短くなってしまった青橋先生インタビュー(あと、謡堂先生の)って、実は抜群に面白かったりしたので、寝かしておくのはもったいないですし。そちらもお読みいただけると幸い。

【訂正】
同特集P72「二見ブルーベリー文庫」の紹介文中に誤りがありました。ゆずはら先生の『試作品少女』は『ファウスト』掲載の「一般小説」ではなくて「マンガ原作」のジュブナイルポルノバージョン。小説掲載誌は『カラフルコミックピュアガール』や同人誌ですね。すみません、完璧に勘違いです。謹んでお詫びの上、訂正させていただきます。

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2006/01/22

なにか載ります

「フランス書院 On-Line・編集部発 最新情報」より

☆青橋由高インタビュー☆
 来週24日(火)発売 週刊SPA!にてなにか載ります。
 というか、青橋先生が恥をさらして(?)インタビューを受けました。
 いや、本当にありがとうございました。
青橋先生のブログでもご紹介いただいたようで。こちらこそ、その節は貴重なお話ありがとうございました。というわけで、お話伺ってまいりました。詳細、取材後記は後日。

ちなみに「美少女文庫スレ」

677 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/01/22(日) 05:44:42 ID:NDVM3GIS
SPA!は「最近流行りのフーゾク・エロ嗜好」みたいな特集をよく組むからな
それ関連のインタビューだろう
は、残念。かすってはいるけど、ちょいハズレ。もっとモロな企画です。

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2005/12/08

森野一角『お仕えします! ドキドキ☆忍法帖』

主人公・音野刀也くんと許嫁の姫宮あかりちゃん、代々刀也くんの家に仕える忍者一族のくノ一、忍ちゃんの巻き起こすラブコメディ。

偏差値が30もあれば、なんとなく内容まで想像できそうなくらいベタな設定だが(だからあえてあらすじは書かない。各自購入の上、確認!)、コメディとしてのできがよい。

まずオープニング。ある晩、刀也君がベッドの中でポータブルDVDプレーヤーを見つつ、オナニーに励んでいたら、忍ちゃんが天井から落下。忍ちゃんのケツでDVDプレーヤー、大破。ビックリした刀也君、勢いで射精。忍ちゃんの顔面に着弾。両親に発見される。きちんと官能小説らしくも、くっだらないコントになっている。

くノ一の忍ちゃんは何かしくじるたびに切腹しようとするのだが、その理由もいちいちくだらない。暗いのが怖くて切腹。あかりちゃんのカバンが刀也くんの足に落ちるのをフォローできなくて切腹。プールで溺れて切腹。そのたび刀也くんが必死で阻止する。この忍ちゃん切腹→刀也くんツッコミの繰り返しギャグもなかなか楽しい。大笑いとは言わないが、クスッと笑いつつ読み進められる。

「偏差値が30もあれば、なんとなく内容まで想像できそうなくらいベタ」と書いたが、何もそれは悪いことではない。偏差値30しかなくても理解できて、しかも楽しめる物語=誰でも楽しめる王道エンターテインメントなんてそうそう書けるものはない。偏差値30は確実にバカだが、偏差値30でも判るエンターテインメントを提供できる作家は確実に腕がある。

それにこういう王道があるから、以前紹介した『ボクだけのお嬢様』本田透『キラ×キラ』(これについては近々紹介させていただく)のようなブッ飛んだ新機軸は新機軸たり得るわけだし、王道を知るから、ボクらはこの手の作品も楽しめる。『水戸黄門』のようなわかりやすい勧善懲悪の物語の仕組みを知っているから、犯罪者心理にもフォーカスした『鬼平犯科帳』に新しさを感じるとでも言おうか(大げさか)。

物語終盤の新任女教師登場からオチへの展開がちょっと駆け足すぎるのがちょっと気になるが、物語、ギャグの安定感は高い。ベタな作品をベタな言い回しでホメるなんて下の下だが、ジュブナイルポルノに興味がある人になら安心してオススメできる1冊だ。


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2005/11/23

あおぞら鈴音『こいねこ~君に逢えたら』

あおぞら鈴音は16歳にしてフランス書院美少女文庫新人賞に入賞した「現役高校生官能小説家」だ。出版業界の端っこに身を置く者としては、本当ならマンセーしたい。16歳にして273ページもの物語を破綻なくまとめたことを。プロ、アマ問わず、文章を書く人間たるもの、できて当たり前のことなのだが、これが意外と難しい。実際、ボクも百数十ページのムック本を執筆することがたまにあるのだが、とにかく体力と時間を削られる。書き終えると妙に疲れ切っていたりする。PC系、ネット系の解説本ですらそうなのだから、これが創作ともなると、相当な馬力が要るはずだ。

それにネットでもよく見るでしょ? お話やテキストがとっ散らかっちゃって、結局何が書きたかったんだかよくわからなくなっちゃってる個人サイトやネット小説。そういうのに限っていい年こいたオッサン(ボクを含む)、オバサンが書いていたりする。それに比べれば、若干16歳できちんと物語の体をなしたものを書けただけでも立派なもんだ。

そして「16歳、高校生作家デビュー!」というシカケを用意したフランス書院も評価したい。話題先行のやり口をよく思わない向きもあるだろうが、本屋やコンビニの店頭にあまた並ぶ雑誌、書籍の中から自社商品を手に取ってもらわなければならないのだから、キャッチーな惹句で耳目を集めるのはひとつの手。『LEON』の表紙に馬鹿デカイフォントで鎮座まします「ちょい不良オヤジ」(姉妹誌『NIKITA』の「艶女」(アデージョ)もそうだね)や、『セカチュー』の柴咲コウの帯文なんかと同じだ。「16歳の官能小説家」は確かに目を引くキャッチフレーズだろう。

ただ、中身がなぁ。手放しでほめちぎれそうにはない。とにかくテキストが固いのだ。特にセリフ。

「うわぁ、気持ち悪い趣味のうえに女性に厳しい……最低ね」
これ、ヒロインの友だちが主人公に向けたセリフなのだが、ミドルティーンの女のコの言葉じゃないよなぁ。

主人公の家はペットショップなのだが、動物にエサをやる時は

「お腹空かしてただろ? ちゃんとお食べよ」
主人公と男友だちとの会話では、
「やっぱすげーな。その知識の広さには驚かされるよ」
「なあ、あっちのクレーンゲームもやろうぜ」
普段、あおぞらは、こんな言葉遣いで話しているのだろうか?

『LEON』には、表紙に銘打たれているとおり、誌面に「ちょい不良オヤジ」になるためのコーディネイトや時計選び、クルマ選びのテクニックが載っている(残念ながら『セカチュー』は泣きながら一気に読めなかったが……)。「16歳、高校生作家デビュー!」と聞けば、紋切り型ではあるが「元気の良さ」とか「瑞々しさ」みたいなものをイメージする。ところが、本作には決定的なまでに若さが足りない。「16歳=元気、瑞々しい」なんて単なる印象なのだから、羊頭狗肉とは言わない(どころか、勝手なイメージの押しつけなのかもしれない)が、もうちょっと「16歳ならでは」というところを見せてほしかった。「文学賞に応募するんだから、ちゃんとした文章を書かなきゃ」とでも思ったのだろうか。しかし、そのお行儀の良すぎるテキストが物語に入り込むのを阻害する(ぶっちゃけヌキにくくする)。こちらにツッコミの余地を与えてしまう。冒頭に書いたとおり、文章を書く力自体はあるのだから、テキストをもっとカジュアルダウンさせたところで、きちんとした物語に仕上げられたはず。次回は彼(彼女?)自身の言葉でかかれた物語を読んでみたい。

【追記】
以前のエントリで紹介した企画では、彼(彼女?)を取材するつもりだった(フランス書院によると、高校生としての生活に支障を来す恐れがあるから取材は一切NGらしいのだが、企画書作成時点では知らなかった)。そのとき、聞きたかったのが「童貞?(処女?)」。結構気にならない?

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2005/11/19

呉田文明『ボクだけのお嬢様 世界で一番の黒魔術』

新井素子先生曰く、新人賞とは、

“そつなくお話を作れる人”を求めているものではありません。どんな破綻やどんな弱点があっても、“新しい人”を求めているもの(集英社「第2回スーパーダッシュ小説新人賞」選評より抜粋)
なのだそうだ。いやはや、おっしゃることごもっとも。新人なんだから多少ヘタクソなのはご愛敬。小手先のテクニックよりも、むしろ新人ならではの新機軸や馬力を見せていただきたいもんだ。

そういう意味では、呉田文明は新人らしい新人なのかもしれない(美少女文庫の新人募集要項では「プロアマ不問」となっているので、ひょっとすると別の版元でデビュー済みの作家なのかもしれないが、まあ、美少女~では新人だ)。その呉田の『ボクだけのお嬢様』のあらすじは以下のとおり。

平凡な中学生・益田拓也くんは、純資産数千億円を誇る五島財閥のご令嬢・五島小夜子様に「下僕」になることを命ぜられたとき、なぜか小夜子様の靴を舐めたあげく、随喜の涙を流してしまう。そして、見事下僕と相成った拓也くんは、小夜子様の執り行う黒魔術の儀式のために、来る日も来る日も足コキされたり、ムチでシバかれたり……。

要はご主人様と奴隷くん(とメイド)の物語なのだが、テキストのテンションがやたらと高い。たとえば、小夜子様のお嬢様ぶりを表しては、

ちょっとやそっとのナマクラな民主主義や自由主義では太刀打ちできない、実効制圧力を持っている、お嬢様
この、目の前におわす五島小夜子お嬢様こそ、この地球の支配者たる造物主の末裔であられ、我々人類を高みからご指導、ご鞭撻いただいているのではないか……
小夜子様お付きのロリータグラマーメイド・蘭ちゃんのオッパイは
大きい。
ビッグだ。
ブルルンだ。
むやみに大仰でデコラティブなテキストは、いかにもイマドキのエンタメ系作家っぽい。それでいて美少女文庫にはいなかったタイプだ。

そして、もうひとつ注目すべきが、ルビ。まずは、代表的なものを列記してみよう。

・初潮が来た→フラグがたった
・受験で合格→ゲームクリア
・登校→ログイン
・声色が変わるのだ→インターラクティブ
・女体→メカニズム
・受精→ビッグバン
お前は田中康夫か! 漢字の熟語にカタカナのルビを振るのはよくある手法だが、ここまでルビ(を振るフレーズ)がエロかったり、ド派手だったりするのも珍しい。しかも、抜群に頭が悪い。蘭ちゃんの下半身に触れたら「声色が変わるのだ」から、確かに「相互作用性」であるところの「インターラクティ」ビティは感じられるだろう。誕生への契機って意味では、まあ「受精」は「ビッグバン」的なのかもしれない。しかし、なぜ「初潮が来る」と「フラグがたつ」? 確かに使用可能なボディにはなるが、文中で初潮が来るのは妹だ。フラグたてちゃ(攻略のための必要条件満たしちゃ)ダメじゃん。ついでに言っておくなら、拓也くんに妹なんていない。あと、当たり前だが、下僕としての使命を果たすべく「登校」することは「ログイン」とは言わない。

テキスト、ルビともに、ちょっと自己陶酔が過ぎる気もする。また、物語の途中で蘭ちゃんが、最後には小夜子様も拓也くんに恋愛感情を抱くようになるのだが、その始まりは唐突だ。いきさつがスッポリ抜け落ちている。が、ここまで勢い任せにハシャいで、粋がってくれると、いっそ気持ちがいい。実は、前出「この、目の前に~」はオチに向けての伏線だったりするのだが、そのオチの頭の悪さ加減、景気の良さも◎。よもや拓也くんが……。たぶん賛否両論分かれるだろうが(ヘタすると否ばかりかもしれない)、ボクはこの作品の闇雲な馬力と、これをリリースした美少女文庫のチャレンジを支持したい。ぜひともこのテンションのまま突っ走っていただきたい。

あと、取って付けたようでなんだが、実用パートも充実。2ch「フランス書院 美少女文庫3」スレの297氏曰く

1.マゾプレイ(お嬢様)、2.合意初体験(メイド)、3.陵辱処女強姦、4.イラマチオ、5.ふたなりってところかな。結構バラエティに富んでいて、使えると思った。
はい、使いました。

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2005/11/18

ヤマグチノボル『シスタースプリング~いつかの妹~』

作者・ヤマグチノボルの代表作といえば、美少女ゲーム『グリーングリーン』シリーズのシナリオ(ノベライズも手掛けている)と、ライトノベル『ゼロの使い魔』シリーズだろう(たぶん)。これら2作品のテイストをひと口で言うなら、やたらとパワフル。『グリーングリーン』は、山奥の全寮制の男子校に通う主人公一味が、共学化を目指すその学校に試験的に放り込まれた女のコたちをいかにゲットするか、そしていかに童貞を切るかに腐心する、度を超えた『毎度お騒がせします』みたいなお話だ(オチはえらい重かったが……)。片や『ゼロの使い魔』は、なぜか魔法の世界に使い魔として召還されちゃった高校生男子が、ご主人さまである魔法使いの女のコとともにその世界を守るべく大冒険。魔法の世界なのに、バズーカをぶっ放し、ゼロ戦でドッグファイトを展開する、いい意味でのインチキファンタジーだ(「いい意味で」ってすごく便利なフレーズだね。いや『ゼロの~』は、ホントにそのインチキくささが魅力なんだけどさ)。そのため、とにかく全開フルスロットルな作風の人なのだと思っていた。

ところが『シスタースプリング』は趣を大きく異にする。同作の主人公は童貞ではないし、女のコをコマす計画を立てながら「ロマンチック&セックス!」などと叫んだりはしない。魔法使いもバズーカもゼロ戦も出てこない。むしろ抑制の効いた内容になっている。

母一人子一人で育った相生恭介くんは、大学入学直前に亡くなった母親の夢を叶えるべく、教員を目指したものの、都内の学校の教員採用試験にすべて落ちてしまう。不況の折、予備校や塾の講師の口もない。そこでやむなく、美人の母がいるにも関わらず浮気を続けた憎むべき父親の経営する長野の女子校に縁故就職することになる。

と、ここまでがオープニングなのだが、一連の美少女文庫作品に見られるお気楽極楽さは皆無。そこでは子どもっぽい怨嗟と大人の割り切りとがせめぎ合っている。

そして、長野駅に降り立った恭介くんは、駅前の歩道橋である女のコと激突してしまう。その出会いのインパクトも相まってお互い一目惚れするのだが、いざ恭介くんが実家についてビックリ。その女のコは、母親と共に実家を出て以来、生き別れになっていた妹の玉城冬香ちゃんだった。実の兄妹とはいえ、10年以上会っていなかったため、気分はほとんど他人。お互い好きな気持ちは高まる一方なのだが、やっぱりそこは実の兄妹。その感情を必死に打ち消し、自制しようとする。そんな中、その冬香ちゃんの葛藤を鋭く見抜いたレズビアンの生徒会長・村松由香里ちゃんは、奸計を巡らせ、冬香ちゃんをモノにしようと画策する。

『ゼロの~』の読者などはお判りだろうが、この人、端正なテキストを書く作家なので、やや重たいこの物語とテキストの相性が非常によろしい。兄妹の葛藤はトコトン根深く、そこにつけ込む生徒会長は本当にタチ悪く描かれている。また、生徒会長に誘われるがままに関係を持つ冬香ちゃん(と生徒会長)はえらいエロい。読んでいる側はそれだけにジレる。それに、そういうタメが効いている分、葛藤を乗り越え、兄妹が結ばれたときにはちょっとしたカタルシスすら感じさせてくれる。「なんのかんので愛し合っている同士が結ばれました。めでたしめでたし」という安直なお話にはせず、兄妹であるリスクを承知の上で、それでも感情や流れ(冬香ちゃんのセリフを借りるなら「運命」)に身を任せることを選択した兄妹(っつうほどヘビーなもんでもないけど)がきちんと描かれているのでオチもすっきり腑に落ちる。「好きあう実の兄妹が幾多の苦難を乗り越えて」なんてふた昔前の悲恋ものっちゃあそうなのだが、そういうベタさ、クサさは一切感じられないはず。とりあえずこれからは『シスプリ』といったら「プリンセス」ではなく「スプリング」を指すことにしよう。そんな阿呆な決意を固めさせてくれるくらい(どのくらいだ?)、“読める”作品だ。

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2005/11/15

わかつきひかる『永遠の君へ 隣りの妹』

“女流官能小説作家”というと「女性ならではの視点と感性で書く」だの「女性らしい繊細さ」だのと、とかく(男子の考える)女性性とセットで語られがちだ(この紋切り型は官能小説家に限らず、女性クリエイター全体に当てはまることだろう)。実際は、飯場のオヤジの猥談のごとき、なんの叙情性もない、ただただドギツイだけのエロが大好物の女流作家もいるかもしれない。“フタナリ&触手でグッチョングッチョン”みたいな、童貞的妄想全開のシチュエーションがお好みの作家がいてもなんら不思議はない。ただ一般的には、女流作家の作風=リリカルだと思われていたりする。

わかつきひかるの『永遠の君へ』は、そんなイメージをいい意味で裏切らない作品だ。

生まれつき心臓に病気のある来栖優衣ちゃんは、そのことを気遣い、何くれとなくしてくれる幼なじみの桐山俊一くんにいつもワガママやイジワルを言ってしまう。とはいえ、優しい俊一くんのことは嫌いじゃない。むしろ好き。子どものころ言ってくれた「ボクのお嫁さんになりなよ」という言葉を今でも信じている。ただ、これまでワガママ放題だっただけに、今さら告白するわけにもいかない。

そんな悩みを巡らせつつもクラスメイトとニューイヤーパーティで盛り上がった明くる朝、要は元旦、はたと目を覚ますと、なぜか半裸の自分の横に俊一くんが……。どうにも記憶はあいまいながら、こんな事態が起きればお互い意識しないわけもない。そして、ぎこちないながらも、お付き合いすることに。ベッドも共にするのだが、そこで優衣ちゃんのMっ気が開花して……。

まあ、ひと口に言ってしまえば、ツンデレ系のお話なのだが、情景描写や優衣ちゃんの心理描写がいちいちかわいらしい。

私はベッドの中で寝返りを打つ。枕元に置いたバービー人形が、ぶうたれている私を水のような青い瞳で眺めている。バービーの白いドレスとベッドを区切るピンク色のカーテンが、窓から吹き込むそよ風に揺れていた。
椅子の背にマフラーがかけてあることに気がついた。俊一のマフラーだ。忘れて帰ったらしい。
「シュン」
マフラーを手に取り、顔を埋めた。ふわふわのニットの感触と、俊一のにおいが鼻孔を刺激した。
――好き……。
俊一の優しい言葉にぐらっとなった。ようやくのことで抑えている『好き』があふれそうになってしまう。
なんだろう、この甘酸っぱすぎるテキストは。それこそボクらがイメージする「女性らしい繊細さ」にあふれた筆致だ。そして、これが優衣ちゃんのラブリーさを一層引き立てる。なんてったって、好きな男子から声をかけられただけで「好き」があふれちゃうんだから。女のコ目線の官能小説は山ほどあるが、ここまで“恋する女のコ”している作品も珍しい。非常に萌え系官能小説、ジュブナイルポルノらしいその在り方はしっかり評価したい。マジメにオススメ。

ただ、この作品、実用パートの構成が特殊なので要注意。エロの描写、分量は十分。しかし、ノーマルなのはメインイベントの1回だけ。あとはセミファイナルまで大半がお尻だ。ついでに中身が出ちゃったりもする。心臓の病気と、付き合い始めるきっかけになった事件を上手に使ってムリなくストーリーを進めているし、このストーリー構成の手際の良さも、ガーリーなテキストとともに、わかつきの巧さなのだが、やっぱり、ねえ?

【追記1】
サブタイトルは微妙に謎。優衣ちゃんと俊一くんは同級生だ。お隣さんだが妹じゃあない。一応、養護教諭をやっている優衣ちゃんのお姉ちゃんは登場するが、あくまで脇役だ。俊一くんの前で従順になっちゃうのが妹チックってことなのかしらん。

【追記2】
イラスト担当はTony。いわゆる「萌え絵」とはちょっと違う、柔らかいタッチのイラストも本作の魅力だ。ちなみに、この人が原画を担当した美少女ゲーム『After……』を某ゲーム誌で編集者名義でレビューしたことがある(ゴーストライターだ)。なんかヘンな話でオモロかった。人は恋人の外見と中身、どちらを信じ、愛するのか? 人はいつまで恋人の死を悼んでいられるのか? そんなテーマのお話だった気がする。

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2005/11/07

清水マリコ『あなたに胸いっぱい――メガネっ娘★初恋』

「書評まがいのことを始めます」なんて宣言したものの、さてどんな作品でハナを切るべきか? ちょっとだけ考えるフリをしてみたが、面倒くさくなったので、直近に読んだものを紹介する。フランス書院のジュブナイルポルノレーベル「美少女文庫」の一冊だ。

清水マリコは、劇団の主宰、ライトノベル『ゼロヨンイチロク』『嘘つきは妹にしておく』や、美少女ゲーム『君が望む永遠』『Kanon』のノベライズ版の著者として知られる人物。キャラクターメイキングにこだわりがあるらしく『ダ・ヴィンチ』9月号「ライトノベル読者はバカなのか?」特集のインタビューにおいて、

(前略)
男の子が主人公故に複数の女の子にモテるという設定がゲームではよくありますが、それはやはり女の子の目から見たら納得いかない。そのような設定で小説を書く場合は、主人公の内面を掘り下げることで、彼の魅力、女性から愛される理由を引き出す
と発言。そして、
読者は眼鏡や巨乳という記号だけではなく、記号から呼び起こされるイメージ、たとえば知性や母性に魅かれるんです
と続けている。『あなたに胸いっぱい』の主人公は、まさにこの「メガネ」で「巨乳」の女のコ。清水はまずこれらの記号から「読書好きでおとなしい」「巨乳をコンプレックスに感じていて、イマイチ積極的になれない」そして「自己処罰的」という内面を掘り起こす。ベタっちゃあベタだが、本作ではこの設定が上手に機能している。

その巨乳メガネ・天咲千香ちゃんは、同級生の水井真人くんのことが好きなのだが、それゆえ、同じく真人くんのことが好きな同級生・山根沙織ちゃんとその取り巻きから目をつけられる。初めは、聞こえよがしに陰口を叩かれたり、クラスメイトをオルグった沙織ちゃんによって村八分にされたりする程度のイジメで済んでいた(これで十分悪質だが……)が、時間が経つにつれ、その内容はエスカレート。果ては沙織ちゃんに焚きつけられた根暗な男子のチ●コを咥えさせられ、頭の悪そうな体育教師(コイツも沙織ちゃんに焚きつけられている)にレイプされかける。ついで用事に、毎朝通学電車の中で痴漢に遭っていたりもする。

なぜそこまで事態がエスカレートしてしまうのか。それは千香ちゃんが「メガネ」で「巨乳」だから。千香ちゃん自身、イジメられれば、悲しくもなるし、イヤだなとも思うのだが、事態の解決に向けてアクションを起こすことはない。反対に「学校内外でなにかとエロい目に遭うのは、自分が巨乳だから。イジメられるのは、オッパイが大きいだけの地味な私が、クラスのアイドル・沙織ちゃんを差し置いて真人くんと仲良くしているから」と内省してしまう。痴漢や理不尽なイタズラにも関わらず、興奮を覚えてしまう自分にも猛烈にヘコむ。被害者なのに。

この巨乳への意味の持たせ方は面白い。グラビアアイドルが「走ったりするたびに、男子が私の胸をエロい目で見るから体育の時間が嫌いだった」なんて発言(本作にも同様のエピソードがある)したりするように、思春期の女のコが巨乳にコンプレックスを抱くこと自体は別に珍しくはないはずだ。しかし、ジュブナイルポルノでは、巨乳は男子の憧れであり(これは本作でも同じ)、女のコにとってもチャームポイントとして描かれがちだ。むしろコンプレックスを抱くのは貧乳さんだ。確かに男子的にはその設定の方が合点がいく。そんな中、女のコ的リアリティを前提に物語を進めている本作の存在は、なかなか新鮮だ。

また、悲劇の巨乳ヒロイン・千香ちゃんは、「チャームポイント・巨乳」のヒロインに負けず劣らずチャーミングだ。苦悩するその姿をかわいそうな存在としてではなく、絶対に被害者ヅラをしないけなげで可憐なものとして描いているからだろう。目一杯イヤな目に遭い、落ちるところまで落ちかけはするが、ちょっと強引ながらも、きっちり救われるので、読後感も悪くない。ハッピーハッピーな設定・展開のラブコメが多い美少女文庫の中にあっては異質な作品ではあるが、そのキャラクター設定、構成の妙で十分楽しませてくれる。

【追記1】
真人くんのキャラクター設定も面白い。千香ちゃんがクラスメイトとイマイチ馴染めていなければ、折に触れ、優しい言葉をかける(これが沙織ちゃんのヒートを買ったりもするのだが)。修学旅行の班決め会議の仕切りに手こずれば、救いの手を差し伸べる。「内向的な性格のくせに真人くんに対する興奮を隠せない自分は、真人くんにふさわしくない」と怯えれば、自らもカッコ悪いところを晒して救済する。とにかく、男前なのだ。正直、実際の思春期男子は、こんなにカッコよく振る舞えない。女のコ的なリアリティに着目する一方、男子については、多少現実離れしていようとも、理想的な姿を描いているように見える。真人くんの言動が鼻につくようことはない(むしろ清々しい)ので、それで何ら問題はないのだが、王子様が女のコのガチっぽい悩みを救ってくれるのは、女流作家の手によるものならではか。

【追記2】
清水のライトノベル作品に通底するテーマは日常の不思議。前出『ダ・ヴィンチ』のインタビューで

(前略)
日常の中で発見した小さな欠片を探し集め、積み重ねていくことによって現れる虚構を、私は、より面白いと思うんです
と語るとおり、どの作品も、些細なこと(帰れない日には必ず連絡をよこしていたシナリオライターの母親が何の連絡もなく2日間帰ってこない。映画館の前で年上のお姉さんに声をかけられた。セリフが歯抜け状態の演劇台本を拾ったなど)を契機に、主人公を取り巻く日常が、緩やかながらも確実に右肩下がりにオカシクなっていく。

本作には、一連のライトノベル作品のように人の闇を引きずり出す教団と対決したり、物語の精と一緒に散逸したセリフを探したりといったファンタジックな展開こそないが、「好きな男のコと同級生になれた」というちょっとしたできごとを発端にだんだん日常が狂っていく様子は似ているのかもしれない。

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2005/11/02

ボツった企画書

books夏の終わり、某誌に企画書のα版とでもいうべきネタメモを送ったところ、色よいお返事を頂けて、企画始動直前まで話は進んだものの、掲載予定号に急きょ大きな広告が入ることに。それ自体は誠にめでたいことなのだが、ボクの出した企画は一般誌の広告とはあまりにも食い合わせが悪い。というわけで、いったん塩漬けになり、ボク自身、代替企画の担当に回ることになった。それから数カ月、その雑誌とは何度となくお仕事させていただいているのだが、ボクの企画の話はいつまで経っても再浮上してこない。たぶんボツなのだろう。担当編集氏とその上司であるところのデスク氏の感触は悪くなかったんだけどなぁ。

その企画というのは、別冊宝島風にいうならば「この官能小説がすごい!」(企画書を送ったのは別宝ではない。あと、高橋源一郎先生が『この官能小説がスゲェ!』という解説本を作っているので、このタイトルはパクリのパクリだ)。フランス書院から16歳の現役高校生作家がデビューしたことや、杉本彩本田透など、他の世界で活躍する人が官能小説を発表している(杉本彩のは『サイゾー』で団鬼六先生に「小説未満」と言われちゃってたが……。本田さんのはぶっ飛んでてボクは好き)ことなどをフックにイマドキの官能小説シーンを整理してみたり、読書の秋にオススメの官能小説をカタログ化したりできないかな、と思っていた。

で、事前取材と称して、目につく官能小説を片っ端から読んでみたのだが、おかげさまで見事にハマった。特にオモロかったのが「ジュブナイルポルノ」。これはライトノベル的・アニメ的ストーリー展開、キャラクター造形の官能小説。わかりやすく言ってしまえば、萌え系官能小説だ。アートアニメ系サイトのはずが、萌えネタ、中二病ネタでのみアクセスを集めるこんなサイトの管理人をやっているせいだろう。根がオタクなんだから仕方ないじゃん。

実は、今回読むまで、ボクはジュブナイルポルノをナメていた。ずいぶん前からこういうジャンルがあることは知っていたし、当時もいくつか読んでみたのだが、専業の書き手の数が少なかったせいか、従来型の官能小説作家の手によるものも多く、その手の作品は「ヌケるけど萌えな」かった(ジュブナイルポルノではないが、ヲタが憧れの声優アイドルとエロる睦月影郎先生の『アイドル声優・ボクの童貞喪失』なんて作品もあった。あれは設定やストーリーの突き抜け具合が抜群にオモロかった)。半面、専業の作家の作品は「萌えるけどヌケない」ものが多かった印象がある。だから今回も「所詮、あんなもんだろ」などと高を括っていたのだが、いやいや、しっかり進化していた。エロ漫画小説板の「フランス書院 美少女文庫」スレ「『二次元』『美少女』Hライトノベル総合スレ」などで評判の作家のものはキャラクターやストーリーはかわいらしいし、しかも、しっかりエロい。ちゃんと「萌えつつヌケる」作品に仕上がっていた。

以上、クソ長い枕、終了。以下、本題。

写真は企画書提出からここ数カ月の間に読んだジュブナイルポルノの一部(レイプもの、陵辱系がイマイチ苦手なので、和姦系のフランス書院「美少女文庫」の作品がやたらと目立つが)。我が事ながら結構な数読んだものだと思うが、実は「楽しむには楽しんだが“そういう目的”には使わなかった」作品が意外と多い。ちょっと色っぽいシーンのある中間小説や、「泣きゲー」などと言われるエロゲーみたいな楽しみ方だ。「エロがあればもちろんうれしいんだけど、ストーリーやキャラクター自体良くできているから、エロがなくても、ないなりに楽しめるんじゃねぇか」という感じ。たいていの文庫版のジュブナイルポルノは、200ページ前後を4~5エピソードに分割、各エピソードにエロシーンを盛り込む従来型官能小説と似た作りになっているので、色っぽい中間小説に比べるとサービス精神旺盛すぎるが。

前出「フランス書院 美少女文庫」スレでも、住人同士、使用頻度の高かった作品を紹介しあう一方、

130 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 20:23:31 ID:WqdP7sZM
青橋の『純情 彼女は剣道部』読了
匂いフェチという新ネタは入れているものの、ストーリーも描写もいつもの青橋節。
抜くことはなかったがヒロインの姉ちゃんの健気さとツンデレぶりは可愛かったので
ラブコメとしては愉しめた。
と発言する住人がいたりする(確かにこの作品はオモロかった。青橋先生は優秀なアベレージヒッターだと思う)。この手のスレでは、この「ヌかなかったけどストーリーは面白かった」的発言は意外と目立つ。

また、一方で某作家の「もうちょっとキャラクターを動かして遊びたいんだけど、途中でエロを入れなきゃいけない。エロが入ると、どうしてもそこでお話の流れが一回止まってしまう。キャラクターやストーリーを見せたいならシリーズ化するしかないのかなぁ」なんて発言を耳にしたこともある。

ストーリーやキャラクターを楽しむ読者がいて、それを書きたい作家がいる。であれば、ストーリー・キャラクター重視の「エロありラノベ」的バランスのジュブナイルポルノというのもアリなのではないだろうか。エロゲーのレビュー仕事をしていた身だから、ポルノメディアを下に見るつもりは断じてないし、従来型の官能小説にもグレイトな作品が山ほどあるのは知っている(館淳一先生、牧村僚先生最高!)のだが、それでも新しい萌え系コンテンツでもあるジュブナイルポルノを従来型の官能小説のいち属性(それも飛び道具的)にしてしまうのは、ちょっともったいない気がする。

ポルノメディアにおけるエロ要素のサイズダウン自体は別に新味のあることではない。ちょうど、前述のストーリー重視のエロゲーみたいなもんだ。数十時間に及ぶ長大なストーリーのうち、エロシーンはわずか数分だけという構成のアレだ。エロゲーにこのタイプと実用本位の「ヌキゲー」があるように、ジュブナイルポルノも、もうちょっとジャンルが多様化・細分化された方が面白くなるのかな、などと思っている。

とはいえ、ジュブナイルポルノ自体がまだまだドマイナーなのだから、認知度が上がり、読者が増えるなど、ジャンルとして成熟しないことには、細分化もへったくれもない。というわけで、今後、弊サイトでもポツポツと作品レビューなどしつつ、微力ながら、この世界を応援していこうと思う。だいたい、雑誌企画のため、つまりはカネのために買い始めた大量の文庫本を寝かしたままにしておくのは癪に障るのだ。ゼニにならなくてもいいから、せめて読書の成果くらいは発表させてくれ!

と、ここまでダラダラと綴ってきたが、言いたいことは以下に集約される。

「これから弊サイトではエロ小説の書評まがいのことをさせていただきます。あと、ボクの書いた企画書に興味を持たれた版元様はぜひともご連絡ください。喜んで、はせ参じさせていただきます」

というわけで、アートアニメファンのみなさん、引くなら引いてしまえ! そしてエロエロさん、こんにちは。

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