青橋由高インタビュー第5回(最終回)「官能小説家なりました!~さよなら」
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――さっきから気になってたんですけど、先生の自虐系のボケに対して、編集さんが即応したり、わざとスルーしたり、ちゃんと笑いを広げにいっているのを見てると、作家と編集者のいいコンビネーションができてるんだなぁ、って思えるんですよ。今日、作家取材ってことで「厄介な人だったらどうしよう?」とか思ってたんですけど、その役割演技というか、連携のおかげですごくスムーズに取材できてる気がするんです。ホントにありがとうございます。
青橋 いつも、こんなに和やかならいいんですけどねぇ……。たとえば、〆切遅れると催促のメールが来るじゃないですか。それはおっかなくてしょうがないんですよ。
――すごく判ります(笑)
青橋 だから、金曜日の夜にメールがないとうれしいんですよ。「ああ、土日生きながらえた」って(笑)
――ええ、ええ! 痛いくらい判ります。
青橋 ところが、たまーに土曜日に電話かけてくるんですよ、ご自宅から。「仕事してますよー」って。
――いい意味でプレッシャーになりますよね。
青橋 向こうがそうやってサボってない、手を抜かない以上、こっちもサボれないし、手を抜けなくなりますよね。私自身、サボり癖があるんで、一回どこかで手を抜いたら、坂道を転げ落ちるかのように行っちゃうと思うんですよ。だから、そういう電話があると、決まって「〆切は遅れますけど、手だけは抜きませんから」って言ってます。手を抜いたらオシマイですよ。もし、それでそこそこの数字が出ちゃったら「ああ、もうこれでいいや」ってなりますから。
――やっぱり、ちゃんと編集さんの意図や希望が先生に通じてるし、逆もまた然りだし、お互い、それに応えてる感じがするなぁ。
青橋 その代わり、付き合いが長いせいか、さっきも話しましたけど、新しいことを実験する、何かフェアとか、っていうと私が駆り出されるんですよ。
――実験要員だ(笑)
青橋 モルモットですよね(笑)
――それって、作品のクオリティや売り上げが安定してるからじゃないですか? 作品自体がダメだったり、イマイチ売れてない作家さんだったりすると、フェア自体の効果測定ができないじゃないですか。ある程度以上売れる作品の売り上げがフェアによってナンボ上積みされるかを知りたいんでしょうから。
青橋 いや、違うと思いますよぉ(笑)。フェアなんか知らないうちにやってますから。本屋に行ったら「あっ、なんかフェアやってる」って感じなんですよ、ホントに。
――内容に関して編集さんのディレクションってあるんですか?
青橋 いや、プロットと本編でメインヒロインが入れ替わるって話じゃないけど、中身はかなり任されてますね。2作目くらいまでかな、内容について指摘があったのは。ただ、キャリアを積んできたこともあるから、内容的にも、部数的にもハードルをだんだん高く設定されている感じはしますね。
――しかも、読者も、青橋作品がどんなものか判ってきているというか、目が肥えてきてますよね。
青橋 だから、新刊発売後1カ月くらいは怖いんですよ。「今回はハズレだった」って言われるんじゃないかって。「もう終わった」とか。前に比べて落ちたと思われるのがホントに怖いし、自分自身「もうピーク過ぎたんじゃないか」というプレッシャーを常に感じながら書いてます。おかげさまで、最新作(当時)の『あねらぶ』が部数も評判も一番いいんで、ちょっと安心してるんですけどね。「これで、もうしばらくおまんま食えるな」と(笑)
――ただ、最初の読者であり、しかも、日本一ジュブナイルポルノを読み込んでいるだろう編集さんの目をパスしてるんだから、そこまで怯えることもないのでは?
青橋 確かにそうですね。だから、原稿を渡す時に毎回聞いてますから。「大丈夫ですか?」「ホントにお世辞言ってませんか?」「つまんなかったら、つまんないって、さっさと言ってくださいね」って。お世辞なんだか、本音なんだかは知りませんけど、一応、その原稿でOKはいただけてます(笑)
――編集さんにとっても、おまんまを食えるか食えないかの問題だから、お世辞なんか言いませんって。ちなみに、一番売り上げがよかったり、手応えを感じたりした作品って?
青橋 たまに読者の方に「どの作品が好きですか」って聞くんですけど、ホントにバラバラなんですよ、これが。普通、これだけ書いてれば、代表作ってありそうなものなんですけどねぇ。
――確かに(笑)
青橋 どれが飛び抜けて売れてるってのもあまりないみたいですよ。
――裏を返せば、すべて高評価ってことですよね。
青橋 3割弱くらいは残すけど、ホームランはないぞ。そんな7番打者(笑)
――いやいや、エースなんですから(笑)
青橋 確かに100万部とかいってみたいですけどね。
――今、官能小説に限らず、文芸の世界で100万部ってのはちょっと……。『電車男』みたいな例もありますけど、あれはネタ本ですから。ああいうネタというか、飛び技でもないとムリですよ。映画化やドラマ化なんてオプションがあってもムリな作品も山ほどあるんだし。
青橋 やっぱりかぁ(笑)。でも大ヒット飛ばして、それで一発で消えるよりも、ずっと長くやっていきたいな、ってのはありますけどね。大ヒットなんかすると、絶対勘違いしますから。こっそり日陰で生きていこうかな、と。
――だから、エースなんですから!(笑)
青橋 いや、日陰は日陰なんですよ。オタク業界、出版業界の鬼っ子(笑)
――ああ、ジャンルの性格はそうかもしれませんね。
青橋 それを忘れちゃいけないんです。ポルノが明る過ぎたりしたら、なんか違うじゃないですか。「日陰でも立派に育つ雑草になるぞ」と(笑)
――最後に目標まで掲げていただいて。今日は本当にありがとうございました!
青橋 こちらこそ、ありがとうございました。すみませんねぇ、バカ話ばっかりで。
――いえいえ、面白いお話ばかりで(笑)
青橋 (担当編集氏に向かって)あっ、そういえば、対インタビュー用の口裏合わせとかネタ合わせとか全然しませんでしたね。
――それを僕の前で言っちゃダメじゃないですか! っていうか、ネタ合わせって何!?
【fin……?】
以上が一昨年末のインタビューのほぼ全文なのだが、原稿の流れに乗せにくかった散発的な質問とその回答については、カットさせていただいた。そこで、最後に、それらの言葉の中でも、特に印象的だったものを簡単に紹介しよう。
本当の意味で心に残るのは、映像よりも紙媒体だと思うんです。たとえば、小説やマンガの中の好きなシーンって「あのページの○行目」とだいたいの場所を覚えておくことができるじゃないですか。「左ページのここら辺にあったな」とか。でも、同じ小説、マンガ原作の映画があったとして、そのシーンを「○時間○分○秒ごろ」って記憶するのは難しいですよね。このリアルな場所や位置としてシーンを記憶できることというのは、紙ならではの強みですよ。
たった1行、数文字で大きなインパクトを与えられるのも小説の魅力ですよね。ミステリーなんか特にそう。綾辻行人さんの『十角館の殺人』の最後の1行なんか「この1行のためにすべてがあったのか」とゾクゾクさせられました。しかも、たったの1行で語られている分、そのシーンを再現した映像よりもインパクトは大きくなる。ジャンルは違うけど、あの境地を目指したいですよね。
私、(ライバルレーベルと目される)キルタイム(コミュニケーション)の「二次元」シリーズって普通に好きなんですよ。私自身もそうですし、美少女文庫も、先方もそうだと思うんですけど、レーベルカラーがキレイに棲み分けされているし、とりたてて敵視してはいないんじゃないですか。共存共栄できればいいですよね。作品のバリエーションが広がるし。いつか先方からお声かかんないかな? って、編集さん、目が怒ってますね(笑)
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今日売りの『週刊SPA!』1/31号「超保存版・上級者のための[活字エロス]研究」の一部を執筆いたしました。
夏の終わり、某誌に企画書のα版とでもいうべきネタメモを送ったところ、色よいお返事を頂けて、企画始動直前まで話は進んだものの、掲載予定号に急きょ大きな広告が入ることに。それ自体は誠にめでたいことなのだが、ボクの出した企画は一般誌の広告とはあまりにも食い合わせが悪い。というわけで、いったん塩漬けになり、ボク自身、代替企画の担当に回ることになった。それから数カ月、その雑誌とは何度となくお仕事させていただいているのだが、ボクの企画の話はいつまで経っても再浮上してこない。たぶんボツなのだろう。担当編集氏とその上司であるところのデスク氏の感触は悪くなかったんだけどなぁ。